「離して、宮村。」
「……やだ。」
「ちかとの約束に遅れちゃう。」
「行かなきゃ、いいじゃん。」

立ち上がり部屋のノブに手をかけた彼の、空いている片手を俺は掴んだ。なんとなく彼が来て、なんとなく彼が帰る。それを俺は気にしないふり。そんないつもの繰り返しだったはずなのに。なんだかもう、限界だった。厄介なことに一度溢れ出した感情は止まらないみたいで、幼稚な独占欲をぶつけるようにして俺は彼の手をぎゅっと握り続けた。馬鹿みたいに。

「宮村、」

そんな俺に彼は一瞬ふわりと微笑みかけて、呼ぶ。どこか諦めにも似た感情が彼の顔に浮かんだかと思えば、次の瞬間には彼は俺の口を塞いでいた。それは永遠にも似た一瞬。もしかしたらたった一秒触れただけかもしれないし、何十秒もそのままでいたのかもしれない。唇と唇を重ねて、離れた時には握る手も離された。


「駄目。後戻り出来なくなるよ。」


にこりと彼は笑って手を振って、部屋から出て行った。最後にそんな言葉を残して。逃げ道を作って。俺に猶予を与えたつもりか、馬鹿。なんて彼よりもっと馬鹿でどうしようもない俺が口にして良いはずの言葉では無いけれども。どうせなら後戻りなんて出来ないぐらいに俺を求めてくれれば良いのにって思った。





掻き乱して感情











091124




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