いつもそうだ。彼は俺が知りたい十のことの、そのうち一つしか教えてくれない。まっすぐ、まっすぐ、ぶつけてくるくせに。ただそう見せることが上手いだけで、本当はほとんどを隠してばかりなのだ。
「宮村!」
にこっと歯を見せて笑ったかと思えば、次の瞬間には静かに黙ってみたり。端から見れば俺が優勢。けれども本当は俺がこいつに振り回されてばかりだった。
(すき、なの?)
(かれがおれを?)
(俺が彼、を?)
言葉に出来ない感情を俺は持て余して、どうしようもないから無視をする。もっともっと彼が明確に率直に伝えてくれたなら、俺だって伝えられるのに。なんて甘えた考えだって分かってはいるんだけど。いつだって俺は待っているのだ。少しでも欲しいから。十分の十、手に入れられますようにと。祈って。
「好き、だよ。」
でも一番大切な一つだ。彼がくれるものは真実の核心の、その一つ。それだけ分かれば後は余計なものなどいらない。そういうものか、と俺は笑った。
じゅうぶんのいち
091115