暗闇が有り難かった。高校生にもなって演劇鑑賞会だなんて、しかもコメディだなんて、そう文句を口にはしてみるものの俺は本当はこの日を楽しみにしていたのだ。何の気兼ねもなく、人の目を気にする必要もなく、彼の隣に座っていることが出来る。そんな時間が堪らなく愛おしくて幸せだった。

「眠い。」
「おー寝ろ寝ろ。」

ぼそっと俺が呟けば彼はいつも通りに明るく笑った。ずっと舞台に向いていた彼の視線が一瞬だけれども俺に向いて、そんな些細なことが堪らなく嬉しいだなんて。絶対に口には出来ない思いは秘めたままに、俺はこてんっと首を彼の肩へと乗せる。この心臓の音が聞こえるんじゃないかと言う近距離で、ここまでのことが出来るのは暗闇のおかげだ。だから、暗闇に救われている。そんな気がした。

(いつか、こいつにも可愛い彼女が出来て俺のこんな行動を煩わしいと拒む日も来るのかな。)

そう心配げな視線を送れば彼はあまりにも優しく俺に触れるから、会場中に広がる笑い声の中で俺は一人泣きそうになった。





優しくて悲しくて
(溢れる思いに泣きたくなった。)












091016




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -