ふかふかのベッドに埋まる。シーツもマクラも掛け布団も、全てが綺麗に整ったそれはどこぞのホテルを思わせた。物も良さそうだから、高級ホテル?なんてあまり長いとは言えない記憶を辿るが、そんなところへ行った経験は無いから分からなかった。でも、違うんだろうな。そう、思う。いくら見かけは綺麗だって、昨日もその前も、基本的には毎日を彼がここで過ごしているのだ。微かに香る。幾度となく感じた、彼の臭いが鼻をくすぐった。そこまで至って、一旦思考停止。恥ずかしくなった。馬鹿らしくなった。なんとなく、嫌で、今は居ない彼へと責任転嫁。ばたばたと手足を動かして、乱す。いい気味だ。なんて思っていればぐらりと思考が揺れる。あれ、そういえば

「正臣君、君、病人でしょ。人のベッドで何暴れてんの。」

ぐらりと揺れる俺に、ぴたりと冷たい物が触れる。顔を上げればグラスに入った水。冷たいそれに意識は覚醒。ああ、俺呼ばれてきたのにいきなり倒れちゃったんだっけ。なんてついさっきの事をようやく思い出す。無理に体を起こしてみても、窓の無いこの部屋では時間は分からない。でも眠ってはいないから、大して時間は経っていないはずだった。多分、昼間かな。うん、そうだった。なんて自問自答を繰り返していれば、彼はグラスを俺に手渡した。

「飲めるんなら飲んだ方が良いよ。」
「…いただき、ます。」

ごくりと冷たい水を口に含めば、一気に世界がクリアになる気がした。気がしたけれども、ひとつだけクリアじゃない。いつもはとてもじゃないけれど、優しいなんて言えない彼が優しい。だから、まだこれは覚醒仕切らない意識が見せているだけなのかもしれない。なんて思う。思って口にする。なんで、優しいの。

「簡単、だからだよ。揺らぐ君を俺に落とすのは、簡単。」

ああ、なるほど。彼の言葉に俺はひどく納得した。確かにその通りなのだ。ベッドの真ん中で体を起こしただけの俺に、彼は近付く。覆い被さり、塞ぐ。冷たい水は意識を覚醒させてくれるけれども、生暖かいそれは意識を微睡ませるばかりだ。グラスが手から離れた。水が零れた。ああ、俺も、落ちる。





染み込む










ついったーより、『「昼のベッド」で登場人物が「落ちる」、「水」という単語を使ったお話』

100827




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -