ただ、なんとなく、空間。ゼロじゃないのにジュウに満たない距離。それが、二人を隔てる境界だ。線なんて言う明確で理解し易いものなどではない。もっと曖昧。もっと理解し難い。いつからだろうね、俺たち二人の間をそれが埋め始めたのは。どろどろしていて、綺麗じゃないよ。どろどろしていて、優しくないよ。なのにしっかり、それは俺たちを隔てるのだ。もっと綺麗で優しくて、染み渡るはずのそれが違う。繋ぐはずのそれが境界。分からないね。理解出来ない。嫌いって言う感情の方がよっぽど簡単なんじゃないかって、俺は思うよ。

「恋して、愛して、人は結ばれるんだ」

本来は、ね。本来なら好きって感情は、お互いを繋ぐものであるはずなのだ。なのに、なんだろうね。俺たちは、繋がるどころか交わらない。そこにあるのが嫌いの間は良かったのに。嫌悪、憎悪、敵意、それは簡単に交わった。怒りは簡単に芽生える。恨みも原因は明確だ。だから、それなら良かったんだ。そのままであったなら、ずっとジュウ以上の距離で俺たちは交わっていられた。なのにジュウ未満。その距離で、俺たちは繋がることはおろか交わることすら出来ないでいる。境界が、邪魔をするんだ。どろどろと、隔てるんだ。恋とは、愛とは、もっと優しくて綺麗なものだと思った。その一瞬は、もう遠いよ。


「俺たちには違ったみたいだね、シズちゃん」






隔て愛











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