「今年も雨、切ないね」

降り続ける雨をガラス越しに見つめながら、彼は楽しそうに呟いた。台詞と表情が一致しない。切ないと言いながらも楽しげに笑う彼。それを俺は訝しげに見た。すると彼はまた口を開くが、別にそれは俺に対しての返答ではない。ただなんとなくに語る。七夕の物語。そして蔑むように言う。

「本当に自業自得な二人だよね。愛に溺れた挙げ句の果てがそれなんて、ばっかみたい」

ああ、嫌な奴。前から、いつも、そう思っているけれども今日は一段とだ。ロマンチックやら切ないねやらそう言った感想はあって良い。そういう物語だろう、七夕の物語というものは。しかし彼は馬鹿にするのだ。そして雨が降っていることに喜ぶ。ああ、嫌な奴。そう思った俺は無視を決め込む。しかし彼はそれすらも構わないと言うように話し続けた。

「会う努力もしてないのにこっちが可哀想だと思ってあげる筋合いがないよね。俺だったどんな方法を使おうとも会いに行くよ、シズちゃん」

なんでそこで俺の名前を出すのか。そう睨むようにして彼を見れば、また、言う。「まぁ、俺は仕事も恋愛もそつなくこなすけどね。なんてったって素敵で無敵な情報屋さんだから。」なんて、言う。だから、殴ってやろうかと思ったけれども、ひるむ。彼が優しく、にこりと笑うから。馬鹿みたいなことを、言うから。こんなやつ、天の川にでも沈んでしまえば良いんだ。


「というわけでシズちゃん、君には彦星なんて奴よりも俺のことをオススメするよ?」






残念ながら天の川は存在いたしません。











100707




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