今日もそれはどこかでは生まれて、どこかでは消えてゆく。所詮人間の心なんて、そんなものなのだ。一生君が好きだよ。永遠にあなただけを愛します。なんて、陳腐な言葉の羅列にしか過ぎない。どうせ吐くならば、嘘だってもうちょっと上手に吐いてあげるべきだ。これじゃあ報われない。ただ一時の夢にしかならない。生きていく為には、あまりにもお粗末だ。流れる、メロディー。それは今日も愛を歌う。愛を乗せる。ただ、並べる。溢れすぎているのだと思う。みんな同じ。ちょっと形を変えてみたって、それはただちょっと化粧の量が変わっただけ。本質までは何も変わらない。伝わらない。ねぇ、恋って、愛って、ありふれていて、それだけ、じゃない?

(馬鹿らしい、な)

手に取ったCDを、俺はそっと元の場所に戻した。恋、愛。こい、あい。あまりにもお粗末なそれを叩き割ってしまおうかと思ったけれど、俺は静止。こんなものを引き取るために金を払うだなんて反吐が出る。だから、代わりにため息を吐いた。本当はこんなことに時間を裂くのだって勿体ないんだ。いくら大好きな人間を知るためだって言ったって、馬鹿げてる。無駄としか思えない。だからくるりと回転背を向けて、おしまいにしようって思ったのに、さ。

「珍しいな、こんなところで」
「……シズちゃん」

ほらね、最悪のタイミング。流石彼だと褒めてあげよう。しかし場所が場所なのか。ただ単に彼の気まぐれなのか。それは分からないが、彼は口も手も出してこなかった。だから俺も何もしない。と言うよりも、口を開こうとしたら彼の方が先に口を開いたのだ。

「この歌、良いよな。結構、好き」

それはさっきまで俺が心の中で散々けなしていたやつだよ。なのに君はそれが良いんだ。そんなありふれた言葉に浸るの、支配されるの。言ってやりたいことも言うべきことも沢山あった。なのに、形になった言葉は違った。






「ねぇ、俺のことは?」






恋だの愛だのありふれた言葉が支配する世界で、恋だの愛だのありふれた言葉に救われる自分が居たんだ。







メーデー













100705




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