「正臣君は甘いもの好き?」
「…まぁ、大概のものが臨也さんよりは好きですね」

にこりとわざとらしく笑みを浮かべ問われたから、にこりと嫌味っぽく笑みを浮かべて俺は返す。しかし、そんなことを彼が気に止めるはずがなかった。それは今さら分かり切っていることである。きっと、どうせ、彼にとって俺への言葉なんて俺の言葉なんてどうでも良いことなのだ。その証拠と言うように、彼は小さく相槌を打ったかと思えばすぐに目の前に置かれるケーキのフィルムをめくり始める。くるくる、器用にフォークを使って。そんな彼の手先を俺はぼうっと見つめた。一口で食べるには些か大きすぎるのではないだろうか。そんなサイズに切り取られたケーキをフォークにさして、くるくる。一瞬宙を舞わしたかと思えば、それは真っ直ぐ向かった。俺の口へ。べちょり。

「おめでとう、正臣君」

にこり、また彼は笑う。言葉と行動。大ざっぱにこれだけを伝えれば、単純に誕生日を祝ってくれているだけだ。しかし、一口で食べるには些か大きすぎるのではないだろうかと思われるサイズに切り取られたケーキ。そして不意打ち。これが重なればただの嫌がらせでしかない。とっさには開かなかった俺の口に頬に、ケーキがべとりとはりついた。

「臨也さん、」

俺はその先は述べない。述べたって意味ない。彼は分かっていて、そうしてる。だから少しでもそうならないようにと行動しようとするのだが、それだって本当は彼には何の意味もないことなのだ。にこりと向けられた笑顔に俺も無理矢理返す。すると彼はぐっと距離を縮めてべろり。甘いね、なんて言って舐めるから、漏れたのはため息だ。

「おめでとう、正臣君」
「…ありがとう、ございます」

ああ、甘いなぁ。本当に甘い。口の中に入り込むクリームに、とろける。思わずあらわれた笑みは自分自身への苦笑と。それから、





甘いのは、












100619




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