※学パロで吸血鬼
※静雄は吸血鬼と人間のハーフ、がおおまかな設定。





くらくらする。ふらふらする。意識がぼうっとして、膝からがくりと崩れ落ちた。それは体育の授業中の出来事だった。別に何もしていない中で膝が砕けて座り込み、両膝からは赤い血が。担当教師や周りの者に促されて、保健室に向かうこととなった。しかし俺が向かったのはそこではない。今は使われていない旧校舎の裏。ここなら誰も来ることはないだろう。その確信があったからこそ、この場所へと来たのだ。今の俺は誰とも顔をあわせたくない。あわせては、いけなかったのだ。

「…情けないな、もう限界なのかよ」

肩が苦しげに上下する中で、俺は漏らすようにと呟いて膝に流れる血に触れる。しかし、それはすぐに消えてしまった。少し前まではあんなに鮮明な赤を見せていた傷は、もう微塵も残ってなどいなかったのだ。案の定掌には何もついてない。そんな指先をじっと見つめて、俺はそれを舐めた。しかし砂の味がする他には何もない。血の味なんて、しない。

「いたいた!サボリはっけーん」

がざがさ。するはずの無い音がしたかと思うと、目の前ににこりと笑う人間。それに俺は驚き立ち上がるが、後ろは壁である。逃げも隠れも出来ない状況だった。ああ、嫌だ。こんなときに人間に会ってしまうなんて、最悪だ。そう心の中だけで吐き出せば、近付く。間を詰められる。まずい、耐えられない。駄目、なのに。そう思いながらもごくりと鳴る喉。本当に、耐えきれない。そんな思いを必死に抑えて拳を握れば、彼は突き出す。自らの手を。

「…何のつもりだ、臨也」
「俺ね、ずっと前から知ってるよ。シズちゃんが吸血鬼だってことぐらいね」

いつも通りの口調で、彼は笑う。片手にはナイフ。そんな彼の言葉よりも、彼の行動に、俺は驚きを隠せなかった。いや、言葉について考えるほどの余裕が無かったと言う方が正しいのだろう。だから、何をするつもりかと見つめていれば、彼はそれを自らの手首に。そうすれば簡単に血は流れて、誘惑的に揺れる。

「早く、飲めば?死んじゃうんでしょ?」
「人の血なんて飲めるかよ…!」

ぐっと突き出される手、赤。もう長い期間口にしていないそれは、ひどく俺の心を揺らす。揺らすけれども、まだ僅かに残る理性だけが、それを止めていた。今にも舐めたい吸いたい口にしたい。そんな感情を。しかしそんな俺を彼はさらに揺らす、揺らす、おとす。

「別に良いでしょ、君は俺が嫌いだって普段から言ってるじゃない?だから、殺す勢いで飲めば良いよ」
「臨、也…」

言葉で、おとす。ぐらり、負けそうになる意識を俺は必死に保つのに、彼は言葉は止めて行動に移す。ぐっと、赤い血の流れる手首を俺の口へと触れさせるのだ。もう、耐えきれない。あながえない。本能のままに真っ赤なそれを俺は舐める。貪る。そうすれば彼はひどく満足そうに微笑んで、言う。言うけれども、本能に負けて理性を捨ててしまった俺にはその言葉は届かなかった。


「シズちゃん、君はそうやって俺なしじゃ生きれなくなっちゃえば良いんだよ」






朱で君と交じる












100606




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