毒だ。正真正銘の毒だ。彼を前にして、思う。全身で、否定。受け入れることを拒否。頭の中ではうるさいぐらいにその存在の危険性をうたうのに、思考と行動はときに一致しないようだった。脳内にはひたすら鳴る警告音、警告音。それが俺に彼と言う存在の危険性を知らせると言うのに、一度口にしてしまえばそれで終わりだ。じわりと広がり征服する。思考を行動を、全て制限。彼と言う存在を望んで、求めて、やまない。毒は毒でも相当厄介なものなのだと、俺は思う。

「正臣君、キスしてあげようか?」
「………」
「沈黙は、肯定だよ」

肯定は、したくない。でも否定をしたいわけでも、なくて。結局のところ、俺はもう大概を彼という毒に侵されてしまっているのだ。自らの意志で、反して無理矢理に。なんて関係ない。一度口にしてしまえばそれでおしまい。毒は的確に効果を発揮。じわりじわりと広がるそれに侵食されて、される。征服される。制限される。あいしているの錯覚を味わわされる。

「臨也さん、」
「なぁに?」
「ちゃんと、愛してください」

毒は的確に効果を発揮。嫌と言うほどに正常に。だから俺は見舞われる。この毒が導く症状に。まだ解毒剤は見つからないこの毒を、俺は受け入れることしか出来ないのだ。





君が毒に溺れる











100516




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