何となくだるかった。全身に感じる倦怠感。だからたまには良いかなって思った。別に大した距離ではないけれど、今から新宿まで帰るのは面倒だ。だからこのまま彼の家に転がりこんで過ごしたって、良いかなって。

「狭い、どけ、臨也」
「狭いのはシズちゃんのへーや、文句言わない」

全く馬鹿みたいだとは自分でも思った。昼間は確かにお互いにお互いを本気で殺し合おうとしていたはずだ。はずだったのに、そんな二人が今は頭を並べて天井を仰ぐ。そんな状況を。もともと狭い彼の部屋の布団の中に潜り込めば、やはり快適と言うには些か無理のある空間である。けれども不快ではなかった。そしてなんだかんだで彼も彼。俺を追い出すなんて真似は一切しないのだ。だからそんな彼を見ていれば自然と笑みが漏れてしまう。可愛いなぁ。そう口に出す代わりに、俺は彼の額へと優しく唇を重ねた。

「おやすみ、シズちゃん」

ちゅっと小さなリップ音。また殴りかかってくるかな。もう疲れてるのにそれは面倒だな。なんて考えながらに俺は彼の反応を待った。しかし彼からは拳の一つも言葉の一つも返ってこない。

「何、どうしたの?」
「お前がっ…!」

不思議に思って覗き込めば、染まる。赤。それも頬のみでなく耳まで。顔全部を、彼は赤く染めていたのだ。何それ想定外。違うじゃん、いつもと。予想外のことに、気付けば自分の顔も熱を持ち始めていた。だって何それ。今さらこれぐらいで真っ赤になるだなんて。こっちの方が恥ずかしくなるに決まってるじゃないか。なんて狭い部屋の中、更に狭い布団の中で二人顔を赤く染め合う。何これ、本当に何なの。なんて俺は一人繰り返して、どうしようも無くなったから見えないように抱き締めた。そして自虐的に笑いながらも、結局はこんな空間へと浸ってしまうのだ。


「本当に、馬鹿みたいだよね」






あからけし










100509




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