「トムさん、」
「静雄、行く前にもう一回今日の仕事確認しとくか」


彼が口を開いたのに重ねて、俺もまた口を開いた。そんな俺の行動に彼は言えなかった言葉はごくりと飲み込んで、にこりと笑いはいと頷く。また、殺した。こうやって、俺は何度彼を殺しただろうか。そう自分自身に問うてみるが答えは見つからなかった。それは単純に、多すぎたのだ。いくつ思い出しても思い出しきることは出来なくて、殺した事実だけが嫌と言うほどに並んでいた。拙い言葉で伝えようとした、彼の真っ直ぐな思い。俺はそれを何度も何度も殺し続けていたのだ。言葉も、思いも。形にならずに俺に殺され死んでいったものたちはいくつあっただろうか。思うと、苦しい。けれども今の俺にはそれを聞き入れてしまう方が苦しい。そう信じていたのだ。だから、殺す。殺してしまう。それしか俺には出来ない。何気ない会話を交わして、平凡な毎日を二人で歩む。そのままで良いのだ。なんて馬鹿みたいに繰り返した。その裏は、ただ単純に恐れていただけなのだけれど。気付いているはずのそれすらを無視していることに決めたと言うのに。そちらの方が簡単に崩れたのだ。生きようとする思いは簡単には死なないのか。はたまたその気なんて俺には無かったのか。


「トムさん、俺あなたが好きです。ずっと、ずっと」
「静雄、」





殺したのは何だった?
(本当は、全部知ってるけれども)










100425




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