求めるでも貪るでもなく重ねられるそれ。抱き合うわけでも無く重ねる行為の中、そこだけがリアルに相手の温度を伝える。しかし、平穏と不穏が同時に存在するようなアンバランスに保たれるバランスは、彼の行動一つでいとも簡単に崩される。

「……いてぇよ、臨也」
「シズちゃんでも案外簡単に血を流すんだね」

俺の唇に歯を立てて、優しく鋭く彼はそれを沈める。そうすれば簡単に血は流れて、彼はそれを愛おしそうに舐めとるのだ。ペロリと、彼の舌が這えばきりりと痛みを感じる。それがよりいっそうリアルをもたらすのだけれど、生憎俺にそう言った類の趣味はない。舐めとった血を絡めた舌を、俺のそれとも絡める。じわりと、痛みの中に自身の血液の味が混ざって、吐き出したくなる気持ちに襲われるが彼はそれを許さなかった。だから俺は挑発するようにして自らもそれを絡め、不意に彼の舌へと牙を立てる。

「舌を噛み切ってしまえば、簡単に殺せる」

実際に試したことがあるわけでも、俺は見たことがあるわけでもないけれど、理論としては知っていた。しかしそんな事実を知りながらもこんな人物とのこんな行為が止められない自分も、大概おかしい。決して正しくはない行為の中で囁かれる言葉を拾い集めては、駆られているだなんて。






囁くは、愛?











100220




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