たわいもない嘘を吐かれて、たわいもない嘘を吐いた。所謂エイプリルフールってやつだった。聞けば、分かる。そんな軽い悪ふざけ。身内同士の小さな嘘にとどまらず、企業やネットでもこれがなかなかに盛り上がる。たまにはこんな日も悪くないな、なんて思っていれば一日が終わるのは早かった。別に名残惜しいと思う程に楽しんで居た訳ではないが、このまま終わるのもおかしい気がした。なんでって、俺は今日あいつと会っていない。こんな行事、あいつが食い付かない訳が無いのに。そんなことを思って居れば鳴る携帯。ほら、やっぱり。彼からたった一行のメール。
「愛してる」
流石の俺だって、今日が何の日かぐらい知っている。エイプリルフールがどんな日かぐらい知っていた。だから慌てず騒がず「エイプリルフールだろ」そう俺もたった一行のメールを送り返した。そうすれば帰ってくるのはまた一行メール。しかし今回は違ったのだ。何がと言われると難しいが、何というか衝撃が?一行と言うよりも一言と言うが相応しいであろうメールを見つめて、俺は静止するしか出来なかったのだ。
「時間」
たったそれだけ。その一言に翻弄される。しかしその言葉で一つ前のメールを見直すが、どうしても動揺するしかなかった。だって、だって。受信ボックス、差出人は彼の名のメール、その受け取り時刻。悪い冗談だ。そう思うのに、何故か緊張で震える手を止めることは出来なかった。いちにのさん。見なくても分かってしまっている彼の電話へコールコール。これで出なきゃ終わりに出来るのに。なんて思うのに、やはり彼とは最悪の運命でありタイミングであるらしい。二回のコールで彼は出て、楽しげに言葉を漏らした。だから、こいつは四月初日の一日なんて関係が無い。年から年中馬鹿なんだ。そう思って俺も小さく小さく笑った。
「やっと気付いたの?俺はずっと本気だよ」
四月馬鹿は関係ない
100402