ざあざあと五月蝿く降る雨。こんなの聞いてない。と言っても天気予報をしっかりチェックしてきたわけではないので当たり前なのだけれど。あまりにも降り止まないそれを前に、苛々は通り過ぎて諦めに近い感情を抱いていた。濡れるしかないか。そう思って小さく溜め息。

(濡らしたくは無かったんだが、仕方ないか…)

別に俺一人だったなら、濡れることへは何の問題も抵抗も無かった。しかし今手に持つものが問題だ。それは事務所に置いてあった雑誌をもらってきたものであり、弟が写っている。もう捨てるものらしかったので、せっかくだからともらってきたのだった。なのにこんな時に限って雨。ついでに言うと近くのコンビニから傘の存在はきれいさっぱり消えていた。つくづくついていない。しかし待つのには限界だった。こんな何時止むかも分からないそれを待ち続けることが出来るほどに、俺の心は広く出来ていない。だから意を決して屋根の外へ足を踏み出す。しかし降ってきたのは雨なんかではなく、もっとひどい。聞き慣れた最悪の声だった。


「おやおや、こんな雨の中走り出したら濡れてしまいますよ?」


わざとらしい声を出して微笑むそいつに俺は思いっ切り嫌そうな顔を返す。いや、嫌そうなのではない。嫌なのだ。だいたいなんでこいつがこの場に居るのか。口には出さなかった筈の疑問に彼は仕事だと柔らかに答える。そしてそれを無視して歩き出す俺を、事もあろうに彼は追ってきたのだ。

「……何だよ、お前」
「ん、シズちゃんが困ってたからね」

しかも、らしくない。俺が困ってたから助けるだなんて彼のキャラでは無いだろう。けれどもまた、それは事実だ。何の意図があってかは知らない。知らないけれども使えるものは使っておいても良いかもしれない。そう思って俺はそのまま無言で歩き続けた。彼との相合い傘なんて、嫌で嫌でたまらない。けれども俺の側に多く傾け、自らの肩は雨に晒したままにして歩く彼。それを見ていたら悪くはないかもしれない。なんて少しだけ思った。




半分は君への、だよ











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