「帝人、誕生日おめでとう!」

零時丁度に鳴る携帯。予想通りの人物からの電話に、暗闇の中一人顔が綻んだ。もう真夜中だと言うのに滑らかに紡がれ続ける彼の言葉。いつもは煩いと邪険に扱ってしまうが、いつもと何一つ変わらずその声が心地好かった。心から祝ってくれる彼の言葉は、その全てが嬉しくて愛おしい。しかしそんな彼の言葉が不意に途切れる。何かあったのかと思い名を呼べば、小さく小さく彼は答える。

「実はさ、居るんだよね」
「……何が?」

急に投げかけられた言葉の意味を、僕は理解出来なかった。だから聞き返せば、彼は珍しく曖昧に言葉を繋げる。どうせ後数時間後には会う約束してるけどさ、なんて分かり切ったことを改めて言う意味が分からない。一体、何が言いたいの。そうもう一度問えば彼は本当に消え入りそうな声で言葉を紡ぐ。

「一番に会いたくて、来ちゃった…」

その時の彼の表情は、驚くほど簡単に想像出来た。多分、真っ赤。耳まで赤くして、必死にその言葉を紡いだのだろう。ああ、なんて愛おしいのか。確かに今日、僕たちは会う約束をしていた。しかしそれは二人切りでは無い。彼主催の誕生日パーティーなのだ。だから、それよりも先に彼が僕に会いたいと思ってくれていたと言う事実。それが堪らなく嬉しかった。だから僕は部屋着のままで、慌てて家を飛び出す。一分一秒でも早く、彼に会わなくてはならないのだ。

「正臣っ!」

姿を見つけるや否や、僕は彼の名前を叫ぶ。すると頬を赤く染めたままに彼が微笑むから、そんな些細なことで生まれてきた喜びを痛感してしまう単純な自分に苦笑した。





ひとりよりみんなより
きみとふたり











100321




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -