「好きです、臨也さん。あなたのことがどうしようも無いぐらいに好きなんです」

真っ直ぐに俺を見つめて、彼はそう言葉を紡いだ。じっと俺に注がれる視線はあまりにも純粋で、真っ直ぐだ。しかしそれ故に、おかしかった。だって俺と彼は異性じゃなくて同性で、彼ぐらいの年だったら同級生の女の子にときめいてみたり何なり色々あるはずだろうに。なのに、彼は俺を選ぶのだ。いつも一緒にいるあの眼鏡の女の子ではなく、同性ではあるが俺よりもずっと一緒に居たであろう幼なじみではなく、俺だ。流石の俺にもそれは理解不能だった。だっておかしい。それでもあまりにも真っ直ぐな視線を注ぎ続けるから、俺の否定の感情の方が否定されてしまう気さえするのだから不思議だ。彼の方が正しいなんて有り得ないのに、彼の方が正しいのだ。自分は彼に絆されているのだろうか、なんて思えばおかしかった。どうしようもない感情を目の前にして、どうしようもないぐらいに笑えてくる。それが全て真実だと知っているからこそ余計にだ。

「好きなんです」
「知ってるよ」

何度も繰り返される愛の言葉。痺れを切らしたのか俺の手を握る彼の力が強くなった。痛みをも生じるほどに重い思い。そこで俺はやっと口を開いて、優しく笑いかけた。にこりと、宥めるように煽るように。そうすればずっと穏やかな、と言うよりも冷静を装っていた、彼の顔が少し歪むからおもしろい。本気なんだ。全部全部真実なんだ。そう、分かるから。俺がそれに応えられないことも頭では分かっているくせに、心は言うことを聞かないんでしょ。そう言うのは嫌いじゃないんだ。人間らしくって好きだ。好きだけれど、俺が好きなのは人間だよ。そう無言で訴えれば、彼の手の力は少し弱まって物理的な距離だけが埋まる。

「愛しています、臨也さん」
「俺も愛してるよ、帝人君」

どんなに距離が縮まろうとも、縮まらない距離が存在するのにはきっと彼も気付いている。気付いているけれども、そう、するのだ。そんな全部をひっくるめて俺は君を愛している。そうやって笑えば、彼は少し悲しげに笑って俺をぎゅっと抱き締めた。





確かに存在するは愛












100319




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -