たぶん、どうしようもなく不器用。本当に大切だと思えるものほど、見えない見せたくない。触れられない触れさせたくない。それは同じだ。残念ながら、彼も俺も。

「しーずちゃん」
「帰れノミ蟲」

お互いにうらはらの気持ちが存在することにも気付いている。気付いているけれども、知らない知りたくない。そう言って誤魔化してばかりだ。もしも、違ったら?もしも、望まない未来が当たってしまったら?そんな不確かな仮定を立てては恐れる。そんな繰り返し、馬鹿みたいなのに。

「いい加減さぁ、死んでくれないかなぁ?」
「それはこっちのセリフだ。今すぐ手前が死ね」

決まり文句、定型文、テンプレート。そうやっていつも例文みたいな答えを繰り返す。しかしそれは本当に正しいのか。それは模範解答?絶対の正解?


「違う、本当は分かってるんだ」


小さく呟けば、何のことかと眉をしかめる彼。けれども俺はそれには何も答えない。答える必要が、無かったのだ。だって今さら。それを言葉にするには時間が経ちすぎていた。経ちすぎた時間を元に戻すなどは到底成し得ぬことだから、今さら素直な感情を直接言葉にすることなどは叶わないのだ。だから今日も繰り返し、繰り返し。同じ毎日の中で生きる。変わらない君へ、変わらない言葉を。それは間違いだって、どこかで思いながらも正当化。


「自分達がどれだけ馬鹿かってことぐらいは、本当は分かってるんだよ」





気付いているのはお互い様でしょ












100313




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