なんとなく、彼の空いた片手に自分の手を重ねてみた。馬鹿みたいだ、なんて思いながら。すると、死んでるのではないかと思うぐらいに冷たい彼の手にぎょっとした。

「とうとう死にましたか、臨也さん。それともこれは氷のように冷たいあなたの心の現れですか」
「何言ってるの、正臣君。手が冷たい人は心が温かいんだよ」

視線は片手に持つ携帯へと注いだままで、彼はそう答える。君は子供体温だね、なんて付け加えるから思いっ切り抓ってやろうかと思ったけれど、馬鹿みたいだから止めた。代わりに俺は馬鹿みたいに手を重ね続ける。

別に何を話すわけでもなくて、彼に至っては携帯から一度も視線を外さない。時折何が楽しいのか分からないが笑って、メールを交わし続けているようだ。どうせろくでもないことを企んでいるのだろうが、隣に居る俺にはどうすることも出来ない。それは分かっているからどうしようともしない。そんな自分が一番ろくでもないな、なんて思いながらも俺は黙っていた。黙って手を重ねたまま、何もしない。しかし彼が不意にその沈黙を破るから、泣きたくなった。


「俺もそんな風に君を愛せれば良かったね」


ああ、そんなのって卑怯だ。そうならないと公言して、そうなる道を断つなんて。期待を持たせるような言葉で、期待を粉々に打ち砕くなんて。そんな酷い仕打ちを受けようとも俺が選ぶ道は一つだと知っているのに、卑怯だ。けれども染るのでは無いかと僅かながらの希望を持って、俺はまた馬鹿みたいに彼の手を握った。涙を流しながらも握るしか、無かった。





あたたかく、あたたかく











100312




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