どくん、どくんと胸が鳴る。こんな感情、初めてかもしれないと思った。けれども、間違いだとも思った。俺はもうずっと前に似たような感情に襲われている。しかしその時は大人の、女性が相手だったのだ。なのに今、俺がそんな感情を抱くのは先輩である。それだけなら良い。性別が、男、なのだ。だから違う。きっと間違い勘違い。そう自分に言い聞かせようとするのに、心と体はうらはらだ。

「静雄?ぼーってして、どっか悪いのか?」

そう言いながら心配げに俺を覗き込む彼。近くにいるだけで耐えられないと言うのに、この距離は反則だ。手を伸ばし、俺の額に触れる彼を前にすれば、もう限界寸前。

「ちょっと熱いなぁ。家まで送ってく?」
「だっ、大丈夫です今すぐ一人で帰りますんで!何の心配もいりません!!」

そんな彼に、俺は慌てて手をぶんぶんと振って否定を返した。そして逃げるようにして彼と別れる。実際、逃げたのだが。こうでもしなければ駄目だった。自分が、壊れてしまいそうだった。どくんどくんとひたすら鳴る胸をぎゅっと強く握っては、聞こえないように気付かないように俺は一人首を振るのだ。






早鐘のように鳴る
(限界、なのかも、しれない)











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