口内を犯される。舌を絡め唾液を送られれば、酸素を欲するばかりの脳は言うことを聞かない。絆されている。そう感じたが、どうすることも出来なかった。どうしようもなくなる。訳の分からないまま、無性に涙だけが流れた。

「いい加減にしろ、臨也。もうこんなこと、するな…」

やっとのことで唇が離れ、まだはっきりとは覚醒しきらない意識のまま絞り出すように声を上げる。けれども俺の言葉に彼は、本当に訳が分からないと言った様子で何故かと問う。何故か、なんて。それを本気で問う意味が分からなかった。だって俺は単純に止めて欲しかったのだ。こんな、行為。好きでもないくせに。

「意味が分かんねぇんだよ。好きでも無い奴とこんな行為を重ねて、お前にとってはただの嫌がらせかもしんねぇけど、」

俺にとってはひたすらに、辛い。その言葉を続けることは、何故か、出来なかった。どうしようもなく流れ始めた涙を前に、為す術が一つも見つからなかったのだ。だいたい、意味が分からない。全てが自分の理解の範疇を超えていたのだ。あいつは俺が嫌がることをわざとやっている。それは当然だ。今さら、分かり切っていることなのだ。なのに、それに、悲しいなんて感情を抱く意味が分からない。

「何それ、何言ってんの。意味分かんないのはこっちなんだけど?」
「だから、好きな奴とやってろって言ってんだ!俺に構うんじゃねぇ!!」

俺の涙を拭おうとしていた彼の手を、俺は簡単に払いのけた。そして、逃げる。もう俺にはそれしか無いのだ。たぶん、そういうこと。悲しいと感じてしまう理由を、俺はたぶん気付きかけているから。



「ばーか。シズちゃん以外に誰が居るって言うんだよ。」






交わらないね












100305




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