泣かせたい。不意にそう思ったのが今回の衝動的行動の原因。彼のどうしようもないぐらいに綺麗な顔を、自らの手で歪めたくなったのだ。余裕そうな表情、涼しげな笑顔。それを全部全部剥がしてしまいたくなって、それから、今に至る。

「油断、したよ。完全に俺のミスだ」

まさか帝君にねぇ。そう言って彼はくっくと笑みを漏らした。まだ、余裕そうだ。それが僕には気に入らない。僕が見たいのは、そんな彼ではないから。

「意外とサドだよねぇ、帝人君って」
「臨也さん、状況分かってます?」

未だ楽しげに笑おうとする彼を追いつめるように、僕は馬乗りになった彼の上でさらに体重をかける。ぐっと、距離を詰めればかけられた圧力に一瞬歪む顔。それは、嫌いじゃあない。けれども、まだ足りない。もっともっと彼の顔を歪ませて、涙を見るまでは、気が済まなかった。だから僕は無理矢理彼の唇に自分の唇を当てる。そして驚きからか油断からか、開かれた口へと簡単に侵入した。後は、ひたすら。ただ彼から酸素を奪うように、ただ彼に酸素を与えないように。そうやってひたすらに彼の口内を犯し続けた。もう彼の体内には酸素なんて一粒も残らないのでは無いか、そう思えるほどにぎりぎりのところまで。


「本当に、サドだ、ねっ…!」

彼が必死の抵抗を始めたところで、僕はやっと唇を離した。流石の彼も限界だったようで、抵抗はきっと本能から。必死に言葉を紡ぎながらもごほごほと、咳を漏らす。そしてそんな歪み始めた彼の頬にはつうっと、生理的な涙の線が走っていた。ああ、綺麗だ。本当はもっと精神的苦痛とかから泣かせてしまいたかったのだけれど、その涙だけでも十分。十分、愛おしい。


「僕はそれが見たかったんです」


そう言って笑って、彼の涙を僕は舐めとる。触れるとびくりと震えて甘い声を漏らしてしまい、そんな自分を嫌悪する彼。それがどうしようもなく愛しくて、這わせた舌をそのまま首筋に移動させ、噛みついた。そうすれば震えて、甘い声で、そんな繰り返しがたまらない。



「本当に、悪趣味」






歪んだ愛情











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