不意に人肌を感じた。と言っても、直に触れるような直接的なものではない。人肌が残っているそれを、感じたのだ。ふわりと香る匂いにも覚えがあって、それを未だ心地好く感じてしまう自分が悲しい。けれども今感じるのは心地好さ以外の別のものである筈なのだ。このまま存在の否定、無視。とも一瞬考えたのだか、そんな易い手が通じるような相手でないことぐらい身を持って知っていた。だから露骨に嫌悪を顔に表し、振り返る。すると、ぱさりと被せられたフードとぱしゃりとシャッター音。

「今すぐ死んで下さい臨也さん」

俺に笑顔と携帯を向ける男に、俺は瞬時に言葉を紡いだ。そんな他者が聞いたら関係を疑われるような言葉へと、彼は携帯をいじり終えてから柔和な笑みを浮かべて返す。まぁ、他者がどう思おうが関係無いのだけれど。そんなことよりも、この人が俺の写真をどうしたのかの方が気になるのだけれど。

「そんなこと言わないでよ。君が寒そうだったから、親切心からだよ。まぁ、どんな反応を見せるのかって言う悪戯心もあったかもしれないけどね」

ああ、絶対後者だな。後者でしかない。彼に親切心なんてものが存在する筈が無いのだ。そう思った俺は、急いで着せられている上着を脱ごうとした。彼を感じるそれを手放すのに些か寂しさを感じたが、きっとそれは幻想だ。しかし、そんな俺の行動は彼の行動によって止められる。彼がフードの両端を掴み、まるで中に入るかのようにして俺の唇に自分のものをあてたのだ。

「見えない方が君にも好都合でしょ。それに冷たい。やっぱり寒かったんだね、着てって良いよ」

フードの中、息のかかるような距離での彼の言葉にどくどくと俺の胸は五月蝿く鳴った。それなのに彼は、いっぱいいっぱいな俺に対してあくまで余裕の表情だ。むかつく。悔しい。なんて幼稚な言葉を発することが出来るはずもなく、俺はただただ彼を睨みつけた。しかし不意に彼の視線が外されて、終了。それに違和感を感じた俺は、彼が視線を向けた方向に自分の視線を合わすが、すぐに硬直。何故、帝が居るのか。そう考えるがすぐに、俺の疑問は別のところにいった。どこから見られていたのか、と。

「こんにちは、帝人君。それと、じゃあね」

しかし俺の目の前の男は何一つとして気にしない。再びフードの中へと入り込んで、優しく囁いてから、手を振った。全く、反則だ。自分の顔に急速に熱が集まるのを感じながらも、それを出すわけにはいかない。だから俺にはあくまで冷静を装って、親友へと笑いかけるほか出来なかった。



「後で直接返しに来てくれれば良いよ。続きはそのときにしてあげる」







隠れたふりして見せつけて













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