どうしようもないと言うのはまさにこんな時なのだと思った。追い詰められて、逃げ出した。なのに目の前には最悪の存在。ああ、どうしようもない。どうしようもない。

「上手く笑えない。笑っていてもそれが正しいのか分からない。誤魔化して、嘘を吐いて、その上に成り立っているものとは本当に真実なのか。考え出したら止まらなくなって、どうしようもないと思ったから逃げ出した。なのに目の前には最悪の人物。どうしたら良いのか分からない。こっちの方がよっぽどどうしようもないじゃないか。……って、ところ?」

口を開いてはいないのに、どんどんと俺の思いが吐露される。ほとんど、全て、正しい。そんな言葉に俺は、ただ上手に笑ってみせる。

「大正解ですよ、臨也さん。特に後半の最悪の人物と言うあたりが。」
「言うようになったねぇ、正臣君も。」

俺の上手な笑みに彼は本当に可笑しいとでも言うように笑う。楽しげに、楽しげに。けれども急にぴたりと笑いを止めたかと思うと、真剣な視線を俺に注いだ。そうして紡がれる言葉は、あまりにも酷く優しい。

「全部捨てて、俺のところにきなよ。そうしたら何も気にしなくて良い。俺は全部を全部分かっているのだから君は何も気にしなくて良いんだ。どう、悪くない話だと思うけど?」

またにこり笑顔を貼り付けて手を差し出す彼。そんな風に優しく手を伸ばされたら、縋らずにはいられない。そんな風に酷い仕打ちを受けるのなら、振り払うしかない。

「最悪、です。」
「そうだね、最低だ。」

俺はぎゅっと手を握り締めてから、自分の立ち位置を確認。ああ本当に、どうしようもないな。






だけどどうかしたいの
(どうしようもない。)
(だけど、どうかしたいの?)











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