どうしようもなく胸が痛む。ずきずきと、それはひたすらに痛みだけを訴え、呼吸も満足に出来ないほどに苦しかった。頭だって何かに意識を奪われたかの如くに満足に機能しない。常にもやがかかったような、そのくせ急に覚醒にいたるような。そんな症状に振り回されていた。
「風邪ですらないよ。君は健康そのものだ。」
「……そんなわけがない。嘘だ。」
「残念ながら、嘘じゃないよ。」
どうしようもなくなって諦めて、知り合いの闇医者のところまで来た。彼の腕は認めている。だからこその納得のいかない診断に、俺は眉を潜めた。だってそんなはずがない。こんなにも苦しくて、悩まされていると言うのに、何でも無いだなんて。
「……臨也、まさか本当に無自覚なの?意外と馬鹿?」
ここに来たのも無駄足だったか。そう小さくため息を吐き去ろうとする俺に降る言葉。無自覚?一体何が?振り返りそう問おうとした俺に、彼は心底呆れたという様子で言う。
「君さぁ、」
「シズちゃん、君の仕業かなぁ?」
信じられなかった。何がって闇医者の言葉が。だから俺は直接確かめに行くことを決めた。俺のこの症状の原因と会えば理由も分かるのではないかと。
「君を見ているとね、胸が痛むんだ。君に会えない日々は苦しいし、今こうして会っていても苦しい。君が俺の全てを支配する。」
何をした。薬でも盛ったのか。そう問い質すつもりだったのにそれは一瞬でかなわないものとなる。だって、何。なんで君がそんな困ったような照れたような顔をするの。だって、何。なんでそんな君がこんなにも、
(本当にただの馬鹿じゃん、俺。)
けれども自覚したからと言って、どうなるものでは無かった。むしろ自覚をしたときから加速度は増す。真っ直ぐ、進行。後戻りはもう出来ない。
「静雄のこと大好きだよね。」
病名は君
100224