なんとなく一人の時間が出来てしまった。もともとクリスマスの休暇で校内に残った者は少ないのだ。そんな中、俺に付き合い残ってくれている彼は一人呼び出しをくらっている。必然的に、俺は一人なのだ。

ふと、荷物の整理でもしようか。なんて思った俺は無造作に重ねたままになっていた紙類に手を伸ばした。そんな中から開いてもいない封筒をいくつか見つける。ああ、こんなのあったっけ。なんてぼうっと記憶を辿るが、所詮顔も知らない見知らぬ女の子からのものなのだ。でも、手紙か。伝えづらい思いを伝えるにはそれは案外良い手段なのかもしれない。そんなことを思い、暇を持て余していた俺は羊皮紙とペンを手に取る。

(さて、)

誰に、なんて質問は今さら野暮と言うものだ。俺が彼以上に伝えたい言葉が、俺が彼以上に伝えられない思いが、存在する人など居るわけが無いのだから。誰かを真剣に思い書く手紙など、初めてかもしれない。そんなことに気付くと今の状況がなんだか笑えてきた。しかし思いは尽きず、思っていたよりもすらすらとペンは進み紙には文字が並ぶ。ドキドキと胸は鳴って、俺に手紙をくれた女の子達も同じ思いだったのかと思うと読まなかったことに対して少し申し訳無くなった。


「ごめん、待たせたね。」


ナイスタイミング、とでも言うべきか。俺がそれを書き終わり封筒に入れた丁度その時に彼は姿を現した。ラブレター?なんて言葉に俺は首を振って慌てて手紙をしまってしまう。しかし長い付き合いだ。いつかこれを渡したって笑いあえるような日が来るはずだ。そんな途方も無いことを思ったからの行動だった。と、言うのに。


(渡せなくなるって分かっていたのなら、)

あの時に渡せていた、だろうか?自分自身に問いかけて、自分自身に首を振る。きっと、渡せてなど居なかったのだろう。俺は臆病で、壊れることが何よりも怖かった。無きに等しい希望よりも、変わらないその関係で居ることを望んだのだ。

今となってはそれが正しかったのかなんて分からないけれども。失わなわずに済んだものは確かにあった。けれど、失ったものも大きかったと言うわけだ。





さよならあいらぶゆー










090723





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