もう届かない君への手紙。書くのはほんの数行で良い。伝えたいことは、そう多くはないのだ。


愛していました。


普段、手紙なんて書いたことは無かった。それも当然、必要なんてなかったのだ。可能な限り共に過ごした。誰よりも時間を共有しただ。だからわざわざ文字にして伝えるようなことなんて無かったし、そうまでしなければ伝えられないこと。それは、伝えてしまってはならないことだったのだ。きっと、ね。

だから、今こうしてペンを走らせる自分はおかしい。もう絶対に届かない言葉をわざわざ紡ぐなんて、馬鹿なことだとは分かっていた。でもさ、今さらじゃん。自分が馬鹿なことなんてもうずっと前から知ってる。でもいつだってその積み重ねの中に俺の幸せはあったのだ。今それをしたって過ぎ去った日々が帰って来ないことなどは、分かり切っていることだった。だから、後少しだけ。俺はそっと数行書き足した。


愛していました。
いいえ、嘘です。
今でも愛しています。


三行。たったそれだけのラブレター。渡す相手はもう居ない。だから俺はそれに小さな火を灯した。そうすれば簡単に燃えて、燃えて、燃えて。それは燃え尽きることなどなく灯ったままでいた。






さよならラブレター










101030





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