まだ、日が射さない。時刻的にはもうきっと日は昇り始めた頃だろうが、この場所へはまだ光は届かないらしい。しかし夜の闇よりも些か明るくなりはじめた空を見て、隣で眠る友たちを見て、思う。いれば、一生光なんて無くて良いと。

「十分、過ぎるよ」

まだ眠る友を起こしてはしまわぬように、小さく小さく僕は呟く。きっと聞こえない。きっと気付かない。だからそっと黒くふさふさな毛を撫でた。あたたかい。一緒に居てくれること、そのことに涙を流してしまいそうになった。黒い犬、小さな鼠、そしてもう一匹は、いない。

「おはよう、ムーニー。お早いお目覚めだね」
「ジェームズこそ、いつから起きてた?」

いないと思った一匹は、一人。他の二人よりも一足早く人間の姿に戻っていたらしく、にこりと僕に笑いかけた。そして僕の質問に、君が愛しのわんこを撫で始めたから、僕には無いのかと思って。なんて楽しそうに言うから、今の君は撫でても気持ち良さそうじゃないからね。そうやって、かわした。

「ねぇ、リーマス。君がどう思っているかは知らないけどね、」

不意に、彼は消す。ふざけた雰囲気、悪戯っぽい笑み。そして今度はひどく優しく微笑むのだ。そしてひどく優しい笑みのままで、言う。

「君が幸せであることは、僕らの望みだ。君にはもっともっと幸せになってもらうつもりだから、覚悟しときなよ」

ぐらり。瞬間僕の世界は大きく揺らぐのに、彼は、戻る。先ほどまでの雰囲気をまとって、楽しそうに杖を構えた。さて、この無防備な黒犬には何をしてくれようか。なんて僕に笑いかけるから、僕も笑った。無意識に流れる涙に君は触れない。僕も触れない。きっと、ようやく射し始めた光の眩しさに、まだ目が慣れないだけなのだから。





ひかりのさすところ












100712





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