無性に夜が怖くなることがあった。ブラックと言う自らの名のもとに、闇に飲み込まれてしまうんじゃないかって。恐ろしい。何が、闇が。黒。

「ジェームズ」

闇の中、弄り、呼ぶ。きっと今日も確かに隣に在る存在を、探して、求めて。決して広くは無いベッドの中だ。簡単に見つけられて、彼の温度に触れる。そのことに安堵する。どうしようもなかった。自分ではどうすることも出来なかったのだ。一度自覚した恐怖には逆らえない。抗えない。

「シリウス」

ぎゅっと。握ったのは俺の方から。抱きしめたのは彼の方から。縋るようにして伸ばした手を引き寄せられて、彼は俺を腕の中に。

「大丈夫、大丈夫。なーんにも怖いことはないよ」
「……何を根拠にお前はそんなこと、」

優しく抱きしめて、優しく頭を撫で、優しく声をかける彼。あまりの優しさに目がくらんだ。当たり前のようにして言うから、思わず笑みが零れた。


「だって君にはこの僕がついてるんだからね」


一体お前は自分のことを何だって思ってるんだよ。そう言ってやりたくもなったけど、止めた。だってそんな言葉に意味なんてないのだ。彼は彼であり、俺にとっての彼という存在もまた彼のままだ。決して揺るがない。揺らぐことのない存在。だから俺はただ笑って、俺の黒を塗り潰してくれる彼に縋った。





黒を塗り潰す色












100627





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