世界が、時々ひどく優しいと感じるときがある。それは闇の後に訪れる光だったり、渇きを癒やす一滴だったり。ざわざわと交わされる会話だったり、ゆっくりととける笑みだったり。触れる度に思うのは彼だった。君は今、感じてる?世界の優しさに触れることが出来た?馬鹿みたいに真っ直ぐに、僕は彼を思っていたのだ。

「リーマス、こんなところにいたのか」

彼に呼ばれれば、ほら、また感じる。けれどもこれだけは僕だけのものだ。僕以外には得られない、幸福の形。けれども僕にはこれで十分だから、それ以外は全て彼のものになれば良いのに。そう思っていた。本当に、笑えるぐらい馬鹿みたいに僕は君を好きなんだね。


「シリウス、君は幸せ?」


彼の言葉に立ち上がり視線を合わせて、僕は唐突に問う。何故いきなりそんなことを聞くのかと彼は言うが、有無を言わさずに答えだけを求めれば、笑った。楽しそうに幸せそうに優しげに、彼は笑った。

「みんながいて、リーマスがいて、幸せじゃないわけがないだろ」

本当に愛おしげに、細まる目。綻ぶ口元。その度にまた僕は触れて、自分がとても恵まれた幸福者なのだと感じる。だから、それが少しでも彼にわたれば良い。いや、世界の全てが彼の為にあるべきなのだ。そんな自分勝手な感情は胸の内に秘め、僕は優しく笑い返した。





君の為であれ










100508





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