幼い頃、眠ることが怖かった。その頃の自分は生きることへとただ精一杯だったから。眠りによる心と体の沈黙。ただただそれを恐れていたのだ。起きていれば確固たる意志の下に生きることが出来る。けれども眠っているときは無だ。何も出来ない。目を閉じて眠りについて、目を開けて起きたときには、一秒前の自分はもう居なくなってしまっているのではないかと思うと恐かった。実子にだって平気で手を下す、そんな奴等だろう。でも、違う。そう言った物理的な話をしているのではない。魔法をかけられること事態は恐ろしくはない。魔法をかけられたことによって自分を失うこと。それが、恐かったのだ。

だから安眠、なんて知らなかった。それどころか眠ることだって、知ったのは最近だ。今まではただ寝るだけで、体の疲れを無理して取ろうとしていただけだ。だから今、眠ることが出来ることが単純に嬉しい。ひょっとしたらそれだけで幸せなことなのではないかと思うほどに。口に出したら馬鹿だと彼等は笑うだろうか。けれども彼等なら、馬鹿だと優しく笑ってくれるだろう。だから俺はまたそっと夢の中に意識を落とす。幸せな、夢の世界へ。


「シリウス、いい加減起きなよ。遅刻しても知らないよ。」
「無駄だよ、お姫様は幸せな夢の世界だ。」
「本当、幸せそうだよね、シリウス…。」


「まぁ、良いじゃないか。彼には沢山幸せを味わってもらわなければならないからね。」







幸せにおやすみ











100225





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