俺たちは大概一緒にふざけあって、大概一緒に罰則を受ける。いつも一緒には居るもののリーマスやピーターは直接参加していることは少なく、その為罰則も二人きりばかりなのだ。しかし二人で特に悪びれた様子もなしに罰則を受けに行けば、別々の罰則を受けさせられることもしばしばあった。そんな時使ったのが、両面鏡だ。お互いにお互いの居ない時間は無駄なものだとばかり思っていたから。会えない時間、一分一秒が惜しい。だからせめてお互いの顔だけでも見ていられるようにとしたのだ。

「そっちはどうだい、シリウス?」
「退屈だよ、ジェームズ。そっちは?」

教師が姿を消した瞬間、鏡を取り出しお互いを呼ぶ。浮かべる笑みは悪戯を成功させた時とは違う。純粋に単純に、嬉しさが溢れ出てしまうのだ。

「君に会えなくて寂しいよ。」

なんてにこりと不敵な笑みを浮かべて言う彼に、俺の顔はまた綻んでしまう。馬鹿、なんて口に出しはするものの馬鹿なのは俺の方なのだろう。触れられるはずの無い彼の癖っ毛の髪に手を伸ばしては、撫でるようにそっと動かす。顔を見て、声が聞こえる様になったら今度は触れたいだなんて。欲はおさまるどころか、どんどんと溢れ出してしまうのだ。

「キスしたい?」

そんなことを思っていれば、彼が甘く囁いた。何を言っているのかと聞き返せば、そんな顔してたよ、なんて彼は笑う。悲しいのは否定が出来ないというところ。しかしこんな状況下では無理な話だ。早く終われば会えるのに、なんて考えていれば彼の声が降る。

「目、瞑って。」

そんな予想外の言葉に、思わず「は?」なんて聞き返してしまう。しかし彼は俺の返事を待つ気なんてさらさらないらしい。有無を言わさずに早く、だなんて言って俺に目を瞑るように促す。馬鹿だ。正真正銘の馬鹿だ。なんて分かり切ったことなのに彼の言葉に逆らうことも出来ないなんて、俺の方がよっぽどの馬鹿だとは思いながらもそっと目を瞑る。そのときの俺はどんな顔をしていたのか。考えるだけで吐き気がする。期待に欲に満ち満ちた恥ずかしい顔だったんじゃないだろうか。そしてその瞬間の彼の顔と言ったら最悪だ。そうっと開いた瞳に映るのはにやにやと笑う彼の顔。「目、開けちゃったの?」なんて本当に最低だ。


「もうお前なんてしらねぇ!」


怒りに震えたそのままで、俺は叫び鏡を裏返した。残念ながらこんな仕打ちを受けてまで彼に笑いかけられるほどに、心は広く無かったから。しかし最後に聞こえた後でちゃんとね、なんて彼の言葉には嬉しくて思わず笑ってしまう。そんな馬鹿な奴なのだ自分は。もうどうしようもない。なんて分かり切ったことを思って、俺は鏡へと小さな口づけを落とすのだった。





鏡越し偽りキッス
(本物じゃなきゃ無駄でしょ?)










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