何故だか、悪いことをしているような気持ちだった。全くそのようなことはしていない。むしろ誉められるべき行為だと言えるはずなのに。不思議と後ろめたいような、気持ち。おかしい。何がそうさせるのか。じっと考えじっと彼を見つめていると錯覚を起こしそうだった。

(全ては彼のこの美しさの所為、だなんて。)

そんなわけがあるはずが無いのに。何馬鹿なことを考えているのかと自分で自分に悪態を吐く。けれども事実、美しいものは美しい。それは否定など出来ぬことだった。整った顔立ちは、瞳を閉じ夢の中に居ようとも何一つ変わらない。髪だって同じ黒だと言うのに、同じだなんて言葉は到底使うべきでは無いと思うほどに自分のものとは違っていた。全てが緻密に計算されて作られているのではないか。なんて思ってしまうほどに彼は美しかったのだ。

(ブラック、)

早く起こしてこの場を立ち去るべきだ。そう頭では分かっていると言うのに、彼の名を言葉にすることは出来なかった。起こしてしまえばこのまま二人仲良くなんてわけにはいかない。それが勿体無い、だなんて。そんなことを考えてしまう自分が嫌だった。だからぎゅっとそんな感情を消してしまおうと瞳を閉じる。そして閉じた瞳を開いたときに合った視線に僕は全てを持って行かれてしまうのだ。

「セブルス・スネイプ」
「あ、ああ」

寝ぼけているからか、いつもの作った笑みも敵意を剥き出しだ視線もない。そんな彼に僕はまるで何か魔法でもかけられたかの如く痛む胸を、さすることしか出来なかった。





まるで君の存在が魔法










091029





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