もう遅いから泊まって行けば、なんて言葉に甘えて今日は二人の家に厄介になっていくことに決めた。新しい命を宿した彼女に代わって、俺と彼で家事などは出来る範囲でやって。そろそろベッドへ向かおうと、そんな時だった。彼が唐突に口を開いたのは。

「降るよ。」

降る、なんて言葉。けれども今日は、一日快晴。とっくの前に夜を迎えた今だって、雨なんて降る気配は無かった。だから訳が分からなく聞き返せば、彼は昔からずっと変わらない絶対の笑みを見せる。


「星が、降るよ!」


そう手を引いて連れて行かれたのは、歩いていける範囲では一番開けている野原のようなところだった。頭上に広がるは満点の星空で。ほら、そんな彼の言葉を合図にするかのように漆黒の夜空にいくつもの線が広がった。

「綺麗、だな…。」

思わず漏れた俺の心からの言葉に、彼は満足そうに微笑んだ。君のその笑顔が見れたなら来たかいがあったよ、なんて恥ずかしげもなく口にする彼に俺の方が恥ずかしくなって。それを隠す為にも俺はまたすぐに空を仰いだ。そんな中彼はまた口を開く。君は何を願う、と。

「お前たち夫婦二人の幸せと、生まれてくる子供の健やかな成長を。」

彼の問いに俺は考えもせずにそう口にする。それは、考えるまでも無いからだ。俺の一番の望みであり願いである。だから星に願いを、だなんて普段しないようなことにまですがりついてしまう。それだけ俺にとっては大切なことなのだ。だから、俺の言葉に穏やかな笑みを浮かべる彼が嬉しくて。なされるがままに肩を寄せ合えば、彼は優しく囁いた。

「じゃあ僕は、君との永遠を。」

僕たち家族のことは君が願ってくれるから、良いでしょう?なんて自分勝手な理屈を並べる彼に呆れる。呆れる、のだけれども。今この時だけはこの幸せに浸らせていて下さい。そう、流るる星に願いを込めた。





星降る夜に願い事












091205





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