誰がそう、言ったのだろうか。人は忘れることで生きていけるだなんて。鮮やかだったあの一時が色褪せることなど無いようにと、彼は忘れることを拒み続けている。もう何一つとして失わぬように必死に手を伸ばしては、その僅かな片鱗をすら逃すまいとして生きていると言うのに。

(まぁ、僕も大概同じだけれども。)

会話の端々に見つけてはあの日々を懐かしみ、重ねる度に現実を思い出す。不毛なことの繰り返しだ。しかし無駄を出さずに生きることが出来るほどに僕たちは器用なんかじゃ無かったから。そして上手な生き方なんて知る余地も無かったから。恨みに縋り生きていくことすら出来ない。しかし、友として彼にはそうさせたくはないと願う。そんな僕らに出来るのは結局、唯一つなんだろうね。


(忘れないこと。)






勿忘草の花言葉











091012





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