前だけを見ていればそれなりの人生だ。けれど後ろを見たら終わり。今この手にはない確かにあった存在を、思い出してしまうから。
生まれた時から一緒だった。死ぬまで一緒だと誓い合った。なのに、そんな彼はもう居ない。隣に居ない意味が分からなかった。居ないことの方が不自然だと言うのに。おかしい。ありえない。いくら否定の言葉を並べようとも存在する事実は事実として何一つ変わることなどないのだ。
こんなことなら破れぬ誓いでも、契っておけば良かったのだろうか。いや、それは違う。だって俺たちは魔法なんかよりもずっと確かな絶対で結ばれていたのだから。なのにそんな絶対はいとも簡単に崩された。一瞬で。そう、一瞬で。振り返りあの日を見る度に、俺は音を立てることすらなく一瞬で崩れ去るのだ。まるで、彼のようにと。
俺は前しか向けない。臆病な俺に残された道は今はそれしかないのだ。だから今は前だけを前だけを前だけを見て。いつかは、後ろで笑う君と泣こう。
背中に黒
091011