いつからか、なんて野暮な質問だって思った。だってそれは俺たちにとっては当たり前でしかなかったから。時を重ね共に生き、当たり前に芽生えた感情だったのだ。だからどんな問いも何の意味も持たない。足を止めふと振り返った時には、どうしようもないほどに俺は彼が好きでした。


「シリウス、こっちを向いてよ。」
「だから駄目、だって、言ってるだろ。」

彼の甘い囁きを俺はぐっと耐えて振り解く。本当なら受け入れてしまいたいのだけれども、そうするわけにはいかなかったのだ。彼の幸せはここには無い。それはどうしたって分かり切っていることだったから。

「またリリーを、」

泣かせてしまう。と、その言葉は飲み込んだ。たぶん言わなくても伝わる。と言うよりも、彼は知っていてそうしているのだから。そして、だからこそ俺はそれを拒否し続けているのだから。

俺たちは親友だ。お互いにそれ以上の感情も抱いているけれども、その枠の中で上手くやっていけていた。そしてこれからもその関係を続けていくつもりだった。そう決めたのは彼女の存在だ。二人が付き合い出して、俺は今まで以上は求めないようにした。それで万事上手くいくのだ。俺が求めすぎなければ良い。それだけの話のはずだったのに。

(分かって、くれない。)

二人の幸せを願って俺はもとの枠の中に収まろうとするのに、彼は何故かそれを許さなかった。だから未だにこんな関係のままで、それは確実に彼女を悲しませる要因だ。俺が彼を好きなように、彼が彼女を好きなように、俺も彼女を好いていた。好き、の種類は違うけれども大切な人だったのだ。だから俺は彼は勿論のこと彼女を悲しませたくも無かった。二人が幸せになるには彼の隣は俺のものではない。そんな単純で分かり切っていることをどうして彼が拒むのか、理解出来なかった。

「お前の隣は俺のものじゃない。」
「君のものだよ。」

俺が必死に絞り出した言葉に、彼はいとも簡単に言葉を返す。それには有無を言わせない絶対があって、俺にはただ彼を見つめるほか出来なかった。リリーのものだと、そのたった一言を口にすることも出来なかったのだ。最低だ。そう自分に吐き捨てるけれど、愛しい人の腕を振り払うなんて俺には到底出来ないことだ。けれども愛しい人の思いに答えること、それは許されない。中途半端な宙ぶらりんな立ち位置で、俺は今日もまた罪悪感に蝕まれながらも心地好い温度に浸るのだ。





君の隣、幸福の立ち位置












090928





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