カシャリとシャッター音に振り返れば、そこには悪戯っぽく微笑んで手を差し出す彼が居た。ベストショット、なんて口にして渡す写真には欠伸をかみ殺せなかった僕の姿が写っていて、僕はわざとらしくおどけた様子でそれを彼に返した。珍しい物をもってるね、なんて言えば彼は分かりやすく嬉しそうに笑って言った。

「一瞬を、収めたくて。」

そう取り出した写真はどれも普通のそれとは違って動かない。マグルの中ではこちらが普通なのだけれども、僕らからしてみれば珍しいものなのだ。しかし、確かにこれは一瞬だ。なるほどね、と僕が呟くが先か彼はまた僕へとカメラを向けた。

「何でそんなに僕を撮るんだい?」
「そこに理由がなきゃ駄目か?」

僕の問いに彼はなんだか得意気に笑うから、僕もたまらず笑った。するとパシャリと再びシャッター音。そうして増えていく僕の写真を彼はあまりにも嬉しそうに眺めるから、愛しさに駆られた。そして彼からカメラを借りて、今度は僕の方が彼にそれを向ける。カメラのレンズ越しに見る切り取られた世界には彼しか写らなかった。そんなことが嬉しくてじっと見ていれば、彼は少し照れ臭そうに笑った。恥ずかしいから早く撮れ、だなんてうっすらと赤みを帯びた頬をして言う彼は堪らなく愛おしい。そんな彼をレンズ越しに見ていることが急に勿体無いことのように感じて、僕は慌ててカメラを降ろした。

「ジェームズ、」

そして、僕の名を漏らした彼に口づけを落とすのだ。彼はそれに小さく抵抗の意を示すが本気ではないことは分かり切っている。たっぷりの時間唇を重ねてからやっと、僕は彼から離れた。

「なんだよ、いきなり」
「そこに理由がなきゃ駄目か?」

彼の言葉を借りて答えれば、彼は小さく頬を膨らませ子供みたいに不満を表す。しかしそれも一瞬だ。勿体なかったんだよ、なんて僕が呟けば意味が分からないと口にしながらも彼は笑った。そんな行動の全部が全部愛おしくて、そんな一瞬を誰かに教えることなんてしたくなかった。だから僕はこっそりと撮っていた彼の写真にそっと口づけを落としてから懐へと忍ばせる。そして全部を全部を逃がさない為、彼の腕に僕の腕を絡ませて顔を見合わせ笑った。





一瞬の君にすら愛










090828





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