溺れていた。どうしようも無いぐらいに彼へと、溺れていたのだ。しかし所詮それはおこぼれと言うやつだ。彼が僕では無い別の者へと向けた優しさへ、愛へ、溺れていたのだ。満ち満ちたそれは許容量など越えて周りにも降り注ぎ、僕が溺れていたのはそれへ。彼に全く悪気が無いことなどは分かり切っていることだった。しかし、彼の向く先が僕になって、僕に彼の全てが向けられたならこんな幸せなどないと。その為にはあの人は居てはならない存在なんじゃないか。なんて馬鹿なことを思ってしまったのだ。

「ピーター…!」

あの時の顔を僕は一生忘れない。あの日全てが消えたのだ。対象が無くなれば対象は変わるだなんて、世界はそんなに甘くは出来て居なかったんだね。でも与えられることが許されないならせめて僕から与えよう。一生残る傷と、恨みを。そうすれば彼が僕を忘れることだけは未来永劫成し得ないから。

(ごめんなさい、大好き。)

もし彼を繋ぎ止めることが出来ていたなら、きっとこうはならなかっただろう。なんて自分に甘い最低の考えだけれども。切り落とした小指に繋がれた糸だけで全てを断ち切れる程に僕たちの関係が甘いもんじゃないってことを、忘れていた。





終末なんて存在しない












090825





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