ざあざあと、雨が降る。さっきまでだって快晴とは言えなかったけれど、確かに空は明るかった。しかしそれが嘘だったかのように今は雨。視界だって塞ぐぐらいに、ざあざあ。

「予報通りやな」
「予報通り?」
「せやで、夕方から深夜にかけて、雨」

自分は今日は一日家の中だから関係無いもんなあ。疑問符を付けて返ってきた言葉に律儀に返事をした後、そうやって嫌みったらしく言ってやる。まあ、そんなのは伝わらないなんてこと、分かってはいるのだけれど。ははは、と悪びれた様子も無く笑って立ち上がった彼は窓の前、俺の横。だから俺は寄りかかり、体重を預けた。じめじめと湿気の多い時期に、そんな行為は生理的には決して心地が好いなんて言えないのだけれど。もっと、根本的に、どこか。

「傘は?」
「持っとるで」
「じゃあ、安心ばい」
「………意地悪」

俺の答えににこにこと返す彼に、思わず頬を膨らます。だって、そんなのって。彼は分かっていて、そうするのだ。分かっているからこそ、そうするのだ。だから狡いって思って、人のことなど言えないはずの俺なのに、棚に上げて拗ねてみせる。すると彼はまた笑うから、伝わる振動がちょっとだけ心地好い。

「うーそ、泊まって行きなっせ」

ふと、合わせられた視線。しかしそれは一瞬で、優しい微笑みを残して彼は再び立ち上がる。明日は学校も休みだし丁度よかね、なんて。それも全部全部知ってるくせに。知っててのくせに。夕食を考えなければとでも言うようにふらりと冷蔵庫に向かう彼の背を、俺はただ見つめた。後一秒遅かったら。後一秒でも長く彼に触れていたなら。きっと、もう、駄目だった。気付かれているとか、気付かれていないとか、気付いているとか。そういう問題では無いのだ。暗黙の了解の中で決められた一線のルール。本当は、理由なんて無くたって一緒に居られたら良いのに。そう思うのは、きっと贅沢。

ざあざあ、ざあざあ。降り続ける雨。一生、止まなくったって良いのに。止まなければ良いのに。手元に転がる携帯電話。開いて、俺は小さくため息を吐いた。






あめ












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