2011/10/15 22:47

冷たいんやろうか。なんて、ふと思って手を伸ばす。小さな疑問。ちょっとした好奇心。机の上の紙に視線を落とした彼の頬へと、そうっと触れた。しかし、冷たい。俺が思うより先に、返ってくる言葉がそれ。

「冷たいな、忍足」

真っ直ぐ視線を向けたまま、彼は同じ言葉を繰り返す。 何を思っているか、分からない。と言うよりも、何も考えていないみたいな。でも、確かに自分の手は冷えてるのかもしれない。なんて彼の言葉を自分の中で繰り返して思う。あたたかい。彼にそう感じるのは、自分が冷たい証拠である。まあ、だからと言って、なんだと言うわけではないのだけれど。跡部はあたたかいんやな。それだけ確かめられたなら、十分だった。だからもう手を離そうとすれば、それは止められる。俺の手の上に、彼の手が重なって。

「跡部はあったかいんやな」
「普通じゃねーの?」

何でもないみたいに、そのまま。こくんと首を傾けるから、思わず笑みがこぼれてしまう。手が冷たい人は心があったかいのだと言ってやれば、彼は鼻で笑ってみせる。それもいつもと何も変わらないから、きっと何も特別ではないのだ。あたたかい。なんて今度は口には出さないで繰り返す。そうすれば彼は何も言わないままで俺を見つめる、から。上に置かれた手と、下にされた手の立場は逆転。ぎゅっと握って、笑う。それだけ。







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テーマ「人外ファンタジー」
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