目の前に茶色いお札が二枚。どうして硬貨じゃだめなのと貴方は言うけれど、だって硬貨じゃだめなのと消化されずに排出されちゃうじゃない。それじゃ意味無いの。それじゃ無為なの。私は茶色いお札を千千に裂き、ばらばらになったそれを一つ一つ丁寧に嚥下します。ごっくんごっくん。お札特有の固くてざらついた感触が喉にひっかかり、とても不快。だけれど、私はそうしなくちゃあいけないの。じゃなきゃ、駄目なの。私、一円の価値もない無価値な人間らしいから。こうやって、価値をつけるのよ。私に費やした金銭はきっとそのまま私の価値に繋がるの。こうしていれば、きっと誰かがわたしを貴重がるわ。絶対よ。二枚のお札を飲み込んで、私はうっとりと笑った。
――――
わたしに かちは ありますか
きているものは わたしの位を あらわすそうです
たべているものは わたしの生活 をしめすらしいです
もっているものは わたしの富であるそうです
そして それらすべてが [わたし]そのもので あるのです
ならば、わたしが
きているものと
たべているものと
もっているものを
とりのぞいたわたしに すこしの かちも ありますか
それは わたしだと いえますか
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[2012.1213]