深海に棲むくらげ

深海にすむくらげはある日、空より光の粒が降ってくる夢を見ました。
ぼんやりと輝く小さな粒は、マリンスノーを照らし、まるで夢のようでした。
きらきらと光る丸い粒は、いつも見ている真っ暗な水泡に似ていました。
けれど、
それよりもずっと美しく、儚く、輝いていました。
こんな深く黒い海の底にも、こんなきれいなものが降ってくるなんて。
水と少しの成分でできたふるふると震える手を一本、彼はそっと伸ばしました。
光を捕まえようと伸ばしたところで、



目が覚めました。




泣いていたのだ、とすぐに気づきました。
零れた筈の涙は海の水と混じり合って、すっかり流れてしまっていたけれど、それでも泣いていたのだと、彼はすぐに気が付きました。
どうして、泣いていたのでしょう。
なにか、欲しかったはずのものを手に入れたような気がします。
望んでいたはずのものを手に入れそこなったような気もします。
暗闇の中で彼は一人はてな、と首を傾げました。
手に入れたかったもの。
自分が望んでいたもの。
食べるものには困ってないし、
誰かに食べられる心配もあんまりない。
このくらい世界で一人はちょっと寂しいけれど、
気ままに浮き漂う生活も嫌いじゃない。
そんな僕はいったい、何を望んでいたのだろう。
彼は再び首を傾げて、傾げました。
ぽこぽこと水がかき乱されて、泡を作りました。
彼はそれをぼんやりと目で追いました。
上へ上へとそれは昇って行って、いつか、海面へたどり着くのでしょうか。
海面には何があるのでしょうか。
彼はつと、目を細めました。眩しげに。
眩しいという感覚も知らないまま。
彼は結局、涙の答えを出すことはできませんでした、
若しかしたら、泣いてすらいなかったのかもしれません。
そう、一人決めつけて。

彼は今日も暗い世界に漂うのでした。




追記よりへびあしー

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[2013.1011]




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