「君」と「私」の十の関係

USBをがさごそしていたら、いつ書いたかも定かでない詩(……多分、詩)が出てきたのであげてみました。すげー、突っ込みどころが多いです。
一応、一つのコンセプトを元にわさわさ書いたやつだったと思います(´・ω・`)
うろんですね。




一つ、願い事がありまして。

私は護る生き物です。


君が涙を流すのならば、
私はその涙を拭いましょう。


君が病に臥したのならば、
私は君を助けましょう。


君が道を見失うのならば、
私がその道となりましょう。


君が人を詰るのならば、
私は君を咎めるでしょう。


君が辛く苦しむならば、
私は君を抱き締めましょう。


君が私に縋ったのならば、
私は味方となりましょう。


だから、我が君。
君が悪夢に魘されるならば、
どうか、私にキスをさせておくれ。



二つ、世迷言がありまして。

私は薄情な生き物です。


君が涙を流すとき、
私はただ驚くだけかもしれません。


君が病に臥したとき、
私はおろおろするだけかもしれません。


君が道を失ったとき、
私はただ君を残念がるだけかもしれません。


君が私を詰ったとき、
私はただほろほろと泣くだけかもしれません。


君が辛く苦しむとき、
私は関与できないかもしれません。


君が私に縋っても、
私はただ無力な一人でしかないかもしれません。


しかし、我が君。
君が夜を恐れるときは、
それでも私を呼んで欲しいと思っています。



三つ、頼み事がありまして。

私は夢みる生き物です。


君の前世が如雨露なら、
私の前世は植木鉢。


君の居場所が枕の上なら、
私の居場所は床の横。


君が壊れたコンパスなら、
私は正確無比の地図。


君は狂ったラジオだったなら、
私はまっさらな原稿用紙。


ケーキを食べるのが君の職務なら、
苦い青汁を飲むのが私の役目。


君の吉備団子はいらないよ。
私はその笑顔だけで充分だから。


だからね、我が君。
君が恐れ多くも怪談を聞いた夜は、
私の下へお出でなさい。



四つ、戦い事がありまして。

私は戦う生き物です。


君が泣く。理由は何だ。
私は倒す。涙のわけを。


君が寝込む。理由は何だ。
私は断ち切る。病のもとを。


君が迷う。理由は何だ。
私はなぎ払う。その迷宮を。


君が批難する。理由は何だ。
私は壊す。私の欠点を。


君が苦しむ。理由は何だ。
私は諭す。強くあれ、と。


君が困っている。理由は何だ。
私は戦おう。君と共に。


しかし、我が君。
私は悩む。理由は何だ。
君が恐れるあの夜は、決して壊せるものでは無い。



五つ、知らぬ事がありまして。

私は無知な生き物です。


君が泣く瞬間を、
私は知らない。

君が罹った病気の名を、
私は知る由も無い。


君が悪い子だって、
私は気づいていない事にする。


君が私を罵る言葉を、
私は知らない振りをする。


君が辛く苦しむような事は、
私が知りたいくらい。


君が私を頼るときなんて、
私が出会うことも無い。


だからさ、我が君。
君も悪夢にうなされるなんて、
私にとってはいい気味だ。



六つ、魔事がありまして。

私は魔法使いです。

君からぽろぽろ、一筋の涙。
私はひらひらハンケチになろう。


君がこほこほ、酷い咳。
私はふかふか布団になろう。


君はふらふら、迷い人。
私はくるくる回る磁石になろう。


君はきゃんきゃん、叫ぶ子犬。
私はがうがう親犬となろう。


君のずきずき、痛めたハート。
私はゆらゆら揺り籠となろう。


君のめそめそ、弱気心。
私はきらきら心も照らせ、ランプとなろう。


けれど、我が君。
君ががたがた、脅える夜。
私はそんな夜にくるくる空飛ぶ魔法使いになるんだ。



七つ、痴れ事がありまして。

私は傍観者です。


君が泣いてる。
私は見ている。

君が病んでる。
私は見ている。


君が迷ってる。
私は見ている。


君が罵った。
私は見ていた。


君が苦しんでた。
私は見ていた。


君に頼られた。
私は逃げた。


だから、我が君。
君は闇夜を恐れてる。
それは私の責任です。



八つ、通ずる事がありまして。

私は同調する生き物です。


君がわんわん泣けば、
私もわんわん泣いちゃいます。


君が風邪にかかれば、
私もなんだか体調が優れません。


君がダークサイドに行っちゃえば、
私もついて行っちゃうかもしれません。


君の私を責める言葉、
私もおんなじ言葉で君を責めるのです。


君が辛いって苦しんだ痛みは、
私の心をびりびりに引き裂くようです。


君が私を頼ってくれるから、
私も君をおんなじように頼るんです。


けどね、我が君。
君がああも怖がる悪夢を
私は恐れていないのです。



九つ、耀く物がありまして。

私は宝石商です。


君の瞳から真珠が零れた時、
私はそれを恭しく掬い取り、


君が病で臥せった時、
私はトパーズを蕩かして与え、


君が道を忘れた時、
私は耀くオパールを足元に落とし、


君のルビーのように禍々しく紅い言葉は、
私の心臓をいとも容易く串刺しにし、


君が辛く苦しみながら生きている時は、
私がエメラルドの風を吹かせ、


君が私を求める時は、
私は君にラピスラズリを授けたりしているでしょう。


そうであるから、我が君よ。
君は安心して夢みなさい。
この黒曜石の海を私が泳がせたげるから。



十、ある愛がありまして。

私は唯の愛する生き物です。


私がキレイと息を飲むとき。
君が一人で泣いているとき。


私が可哀相と同情するとき。
君が病に苦しんでいるとき。


私が艶やかと感嘆するとき。
君が終に外道になったとき。


私が驚き呆れてしまうとき。
君の悪口が平凡であるとき。


私が支えたいと感じるとき。
君が辛苦に立ち向かうとき。


私が自分を誇りに思うとき。
君が私を頼ってくれたとき。


しかしね、我が君。
私が君を可愛いと思うとき。
それは不謹慎にも君が悪夢に飛び起きたときなのです。


[2013.0524]




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