USBをがさごそしていたら、いつ書いたかも定かでない詩(……多分、詩)が出てきたのであげてみました。すげー、突っ込みどころが多いです。
一応、一つのコンセプトを元にわさわさ書いたやつだったと思います(´・ω・`)
うろんですね。
一つ、願い事がありまして。
私は護る生き物です。
君が涙を流すのならば、
私はその涙を拭いましょう。
君が病に臥したのならば、
私は君を助けましょう。
君が道を見失うのならば、
私がその道となりましょう。
君が人を詰るのならば、
私は君を咎めるでしょう。
君が辛く苦しむならば、
私は君を抱き締めましょう。
君が私に縋ったのならば、
私は味方となりましょう。
だから、我が君。
君が悪夢に魘されるならば、
どうか、私にキスをさせておくれ。
*
二つ、世迷言がありまして。
私は薄情な生き物です。
君が涙を流すとき、
私はただ驚くだけかもしれません。
君が病に臥したとき、
私はおろおろするだけかもしれません。
君が道を失ったとき、
私はただ君を残念がるだけかもしれません。
君が私を詰ったとき、
私はただほろほろと泣くだけかもしれません。
君が辛く苦しむとき、
私は関与できないかもしれません。
君が私に縋っても、
私はただ無力な一人でしかないかもしれません。
しかし、我が君。
君が夜を恐れるときは、
それでも私を呼んで欲しいと思っています。
*
三つ、頼み事がありまして。
私は夢みる生き物です。
君の前世が如雨露なら、
私の前世は植木鉢。
君の居場所が枕の上なら、
私の居場所は床の横。
君が壊れたコンパスなら、
私は正確無比の地図。
君は狂ったラジオだったなら、
私はまっさらな原稿用紙。
ケーキを食べるのが君の職務なら、
苦い青汁を飲むのが私の役目。
君の吉備団子はいらないよ。
私はその笑顔だけで充分だから。
だからね、我が君。
君が恐れ多くも怪談を聞いた夜は、
私の下へお出でなさい。
*
四つ、戦い事がありまして。
私は戦う生き物です。
君が泣く。理由は何だ。
私は倒す。涙のわけを。
君が寝込む。理由は何だ。
私は断ち切る。病のもとを。
君が迷う。理由は何だ。
私はなぎ払う。その迷宮を。
君が批難する。理由は何だ。
私は壊す。私の欠点を。
君が苦しむ。理由は何だ。
私は諭す。強くあれ、と。
君が困っている。理由は何だ。
私は戦おう。君と共に。
しかし、我が君。
私は悩む。理由は何だ。
君が恐れるあの夜は、決して壊せるものでは無い。
*
五つ、知らぬ事がありまして。
私は無知な生き物です。
君が泣く瞬間を、
私は知らない。
君が罹った病気の名を、
私は知る由も無い。
君が悪い子だって、
私は気づいていない事にする。
君が私を罵る言葉を、
私は知らない振りをする。
君が辛く苦しむような事は、
私が知りたいくらい。
君が私を頼るときなんて、
私が出会うことも無い。
だからさ、我が君。
君も悪夢にうなされるなんて、
私にとってはいい気味だ。
*
六つ、魔事がありまして。
私は魔法使いです。
君からぽろぽろ、一筋の涙。
私はひらひらハンケチになろう。
君がこほこほ、酷い咳。
私はふかふか布団になろう。
君はふらふら、迷い人。
私はくるくる回る磁石になろう。
君はきゃんきゃん、叫ぶ子犬。
私はがうがう親犬となろう。
君のずきずき、痛めたハート。
私はゆらゆら揺り籠となろう。
君のめそめそ、弱気心。
私はきらきら心も照らせ、ランプとなろう。
けれど、我が君。
君ががたがた、脅える夜。
私はそんな夜にくるくる空飛ぶ魔法使いになるんだ。
*
七つ、痴れ事がありまして。
私は傍観者です。
君が泣いてる。
私は見ている。
君が病んでる。
私は見ている。
君が迷ってる。
私は見ている。
君が罵った。
私は見ていた。
君が苦しんでた。
私は見ていた。
君に頼られた。
私は逃げた。
だから、我が君。
君は闇夜を恐れてる。
それは私の責任です。
*
八つ、通ずる事がありまして。
私は同調する生き物です。
君がわんわん泣けば、
私もわんわん泣いちゃいます。
君が風邪にかかれば、
私もなんだか体調が優れません。
君がダークサイドに行っちゃえば、
私もついて行っちゃうかもしれません。
君の私を責める言葉、
私もおんなじ言葉で君を責めるのです。
君が辛いって苦しんだ痛みは、
私の心をびりびりに引き裂くようです。
君が私を頼ってくれるから、
私も君をおんなじように頼るんです。
けどね、我が君。
君がああも怖がる悪夢を
私は恐れていないのです。
*
九つ、耀く物がありまして。
私は宝石商です。
君の瞳から真珠が零れた時、
私はそれを恭しく掬い取り、
君が病で臥せった時、
私はトパーズを蕩かして与え、
君が道を忘れた時、
私は耀くオパールを足元に落とし、
君のルビーのように禍々しく紅い言葉は、
私の心臓をいとも容易く串刺しにし、
君が辛く苦しみながら生きている時は、
私がエメラルドの風を吹かせ、
君が私を求める時は、
私は君にラピスラズリを授けたりしているでしょう。
そうであるから、我が君よ。
君は安心して夢みなさい。
この黒曜石の海を私が泳がせたげるから。
*
十、ある愛がありまして。
私は唯の愛する生き物です。
私がキレイと息を飲むとき。
君が一人で泣いているとき。
私が可哀相と同情するとき。
君が病に苦しんでいるとき。
私が艶やかと感嘆するとき。
君が終に外道になったとき。
私が驚き呆れてしまうとき。
君の悪口が平凡であるとき。
私が支えたいと感じるとき。
君が辛苦に立ち向かうとき。
私が自分を誇りに思うとき。
君が私を頼ってくれたとき。
しかしね、我が君。
私が君を可愛いと思うとき。
それは不謹慎にも君が悪夢に飛び起きたときなのです。
[2013.0524]