ミルク | ナノ
※大人と高校生、2012バレンタイン
「ルシェ、なんで?!」
フィディオは涙目で、椅子に腰掛けるルシェの足にすがりついた。
その様子は必死そのもの。
けれどルシェはツンとすました顔をして取り合わない。
「だって、お兄ちゃんはファンの子たちから沢山チョコ貰えるじゃない」
「そんな!ルシェのは特別じゃないか!ほかの子とは違う!」
バレンタインなのに本命からチョコが貰えないなんてあんまりだと悲痛に叫ぶフィディオはいたって真剣だが、ルシェは呆れたように彼を見下ろし、ため息をついた。
イタリアの得点王のこんな情けない姿、ファンの女の子たちは想像出来るだろうか。
「特別っていうけど、じゃあなんで昨日他の女の子とデートしてたの」
不思議だわ、と笑うルシェの表情にフィディオは背筋が凍る思いがした。
「いや、それはねルシェ、どうしてもしょうがない理由があってだね・・・」
「ふぅん、その理由って何かしら」
わたし分からない、なんて言いながらこてん、と首をかしげて見せる仕草のなんて可愛いことか。
しかし言っていることは怖い。
そしてすごい怒っている。
「・・・ごめんなさい、ファンの子に誘われて、ちょっと調子に」
「乗っちゃったのね」
「・・・ごめんなさい」
「チョコはなし」
「それだけは・・・!!!」
ねぇキスもハグも手をつないでもいないよ!?
写メは撮ったけど!でも本当に食事しただけなんだ!
言い訳を連ねるフィディオを哀れんだ目で見ながら、ルシェはまたため息をついた。
「・・・お兄ちゃん有名だし、もてるし、でもファンサービス以上のことだってしてないって信じてる」
でもね、とルシェは腰をかがめてフィディオの顔を両手で包みながら言う。
「あんまりそうゆうことしてると、ルシェ嫉妬しちゃうから」
「・・・以後、気を付けます」
「うん、お願いね?」
そういうと、ルシェは触れるだけのキスをフィディオの唇に落とした。
チョコは用意してないけど、これで仲直りにしよう。