二人を繋ぐ橋の掛け方 | ナノ
※2011七夕
『僕らって織姫と彦星みたい』
はあっとワザとらしくつかれた大きなため息は、電話越しでもなんとなく、うっとしてしまう。
別にこっちばかりが悪いわけじゃない。
状況が悪いのだから、仕方がない。
「離れ離れってか?」
なんとか冗談めかして言っても、そう、と返事した声はいつもの声よりさらに低いからたちが悪い。
「・・・年に一度では、ねえだろ」
冬とか春にだって会ってるわけで。
ただ、夏休みが一番長いから、その分多少の長期滞在が出来るという利点は物凄く大きいのは分かってる。
『僕にとっては、そういう感覚だけどね』
吹雪の一言一言がチクチクと攻撃してくる。
ああ、だんだん自分の言うことが言い訳がましくなってきた。
「・・・ああもう!悪かったって!夏休みにそっち行けないかもしれないってのは、まだ確定事項じゃねえから!」
言うんじゃなかったと思っても、もう遅かった。
まだ決まったわけではないが、長期休みのたびに遊びに行っていた北海道に、次の夏休みは行けるか分からないと話してしまった俺がバカだった。
まだ可能性がないわけじゃないのだから、言わなくても良かったのかもしれない。
でも、ぎりぎりになってやっぱり行けませんと言うのは、期待させて傷つけるだけだと思った。
何より、行けないかもしれないという可能性が出てしまったことに、俺自身が物凄くがっかりしているんだ。
言わずにはいられなかった。
寂しいのはお前だけじゃない。
・・・なんてことは言えないから、もう謝るしかないけど。
『まさかバイト先が潰れたっていうのは、同情するけどね・・・』
溜め息まじりにもともと安月給だったのにね、と続けられた言葉にはトゲしかない。
仰る通りで。
「・・・すぐに、代わりのバイト見つけっから」
『うん、頑張って、そうして』
僕、ほんとにほんとに楽しみにしてるんだからね?
次に聞こえてきた言葉にはトゲはなくて、代わりに本当に、俺が来れなかったら悲しいっていう感情だけが込められているのが分かって。
「おう・・・、その、ほんとにわりい」
電話の向こうで、すっごい情けない、泣き出しそうな顔をしてんだろうな、って想像出来た。
俺もだけど。
電話で良かった。
そんな顔見たくないし、見せたくない。
何がなんでも、旅費を稼がねばと思った。
こいつだって、毎回毎回こっちまで来てくれてるのだから。
落ち込んで、泣き言を言ってる場合じゃない。
『期待、してるね』
「おう、なんなら短冊にお願い書いとけ」
柄にもなくメルヘンなことを言ってしまってから、少し後悔する。
『ふふっ・・・了解』
でも、吹雪の声がやっと笑ったから、良しとしよう。