キラキラ | ナノ
休日、ひとで賑わう道を手を繋いで歩いていると、急にルシェはうふふと笑った。
「今日は、良いお天気だね」
フィディオは隣にいる彼女を不思議そうに見たあとに空を見上げた。
確かに今日は良く晴れている。
空は華やかに青く、太陽が燦々と輝いて夏が近いことを物語っていた。
「分かるのかい?」
そう口にしてしまってから、後悔した。
目の見えない彼女に対して、なんの悪意は無いとはいえ軽々しく言って良いことではなかったと思えて、フィディオは慌てた。
「ごめん、ルシェ!」
そんな彼に対して、ルシェはにこりと微笑んでみせる。
「そんなこと、気にしないで」
そして閉じた瞳のまま、空を見上げた。
「色とか、そうゆうのはわからないよ、見たことないから。
でもね、光は分かるの」
「光?」
「うん、わたしの目はね、いつも真っ暗なわけじゃないの、光によって変わるんだよ」
日差しが暖かい日は白くきらきらして、肌寒い日はちょっとどんよりする。
「あつーい夏は、眩しいくらいだよ」
そう言う彼女はどこか楽しげだ。
「目が見えないのは大変だけどね、いいところもあるんだよ」
フィディオは、ルシェを真似てそっと瞳を閉じ、再び空を見上げてみた。
なるほど、確かに瞼越しに光が通るような、僅かにきらきらしているような気がして、これはすごい発見なんじゃないかと胸がドキドキする。
「うん。分かる気がする」
「本当?」
フィディオがはしゃいだ声をあげると、ルシェは嬉しそうに笑った。
瞳を閉じたままフィディオは、少しだけルシェのいる世界を共有出来た気がして、いまの青空に負けないくらい気持ちが晴れ渡った。