ふぇち | ナノ
※高校生

あたたかな南風が強く吹いた。
向かい風のそれは、少し斜め前を行く小鳥遊の紺のプリーツスカートを揺らした。短いそれが捲れたことで白い太ももが際どいところまで露になって、不動は慌てて目を反らす。

当の本人は全く気にする様子もなく、縁石の上をバランス良く歩いていく。まるで猫のように滑らかな足取りだった。少しは気にしろと心の中でツッコミを入れた。

「パンツ見えんぞ」

小声で呟いたつもりが、どうやら聞こえていたようだ。
くるりと振り向むいたことで、またスカートがふわっと広がる。随分よくまぁ広がるスカートだと、不動は変に感心した。
縁石の上だというのに綺麗なターンを描いた動作に、今度は目をそらせなかった。
紺からすらりと伸びている白い足。全体的に細く足首はきゅっとしているが、しかし必要な筋肉がついている形の良さ。太ももだけは程好い肉付きをしていて柔らかそうだ。

美味しそう――という形容がぴったりだと思った。

中学生の頃はただ細いだけだったはずなのに、と不動は昔をぼんやり思い出す。

かつて一緒にフィールドを駆けたあの頃、少女は少年だった自分とまるで変わらないひょろりとした体型だった。
いつの間に女らしくなったのだろう。

「何見てんのよ」

小鳥遊の声に、不動ははっと我に帰った。
たったいま自分の考えていたことにやましさを感じて、押し黙る。

「…見とれちゃった?」

茶化すように言う小鳥遊は、縁石から降りると不動にぐっと顔を近付けた。
近距離で顔を覗きこまれて、不動はうっと身構える。
しばし互いに無言で見つめあっていると、不意に小鳥遊は口の両端をにっと持ち上げた。

「不動くんたら、へんたーい」

かあっと、頬に熱が集まるのを感じた。
あまりに楽しそうに笑われたのが悔しくて、うるせえと悪態をつきながら利き手をコの字にして小鳥遊の両頬をがっと挟み掴んだ。
タコのように口が突き出て、それはそれは嫌そうに眉根を寄せてこちらを睨み付ける小鳥遊を見ると、不動は満足げにうなずいた。
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