これが恋だなんて | ナノ
※塔→りか
ぐずぐずと泣きながら愚痴を吐くりかの相手をし始めてからもう二時間たったことを、ちらりと盗み見た壁掛け時計から知った。
アポなし突撃された時点で感づいてはいたけど、あたしの顔を見た途端にわあわあと泣き出した彼女を見て「ああ、またか」と思った。
男と別れてきたようだ。
今回は一ヶ月。原因は相手の浮気。
前も、前の前も似たような感じじゃなかったっけ。りかの男に興味なんかないけど。
良くも悪くも恋愛体質で、好きになると一途にのめり込みやすい彼女が、また傷つく結果になったことには無関心ではいられない。
「りかも懲りないよね、まぁた似たような男にふりまわされてさ」
りかに向かってタオルを投げる。涙でメイクがぐちゃぐちゃだ。
「今回は違うと思ったんやもん」
ぐずり、と鼻をすすってタオルに顔を埋めた。
「それも聞き飽きたって」
呆れるしかない。こんなやりとりも何度目だか。
「あたしがいればいいじゃん」
男なんていなくたってさぁ。
「塔子は友達やろ、それとこれはちゃうやん」
今度はりかが呆れた口調だ。付け睫毛の取れかけた目が三日月型になる。
あ、やっと笑った。
「そうなんだけどさ…」
「ん、でもおおきに」
塔子に聞いてもらうとスッキリする、と前に言われたことを思い出した。
りかにとってのそうゆう立ち位置になれたのは嬉しいけど、でも。
きっと明日には立ち直って、また新しい恋を探す。
次はどんなひとを好きになるかは知らないけど、あたしはまたそのはなしを聞いて、良かったじゃんと笑って、きっとまたこうやって慰めて。もしかしたら次は慰めることはないかもしれなくて。
友達って嬉しいことなのに、どうしてこんな苦しいんだろう。