贈り物 | ナノ
はい、と差し出された白い箱を見てわたしは首をかしげた。

「フィディオお兄ちゃん、これは?」

いつもの公園、いつものベンチ。
お兄ちゃんを待っていたら、普段なら持ってくるのはサッカーボールなのに、今日は違う、箱を持ってやってきた。

「今日はサッカーしないの?」

もう一度首をかしげて聞くわたしを見てお兄ちゃんは笑った。

「それも捨てがたいけど、今日はデートしようと思って」
「デート?」
「…いやかな」
「ううん、お兄ちゃんにデートに誘われていやなひとなんていないよ」

だってとってもかっこよくて優しいものと見上げて言うと、お兄ちゃんはなぜか少しほっぺを赤くして目をそらした。
どうしたのと聞こうとする前に、これはそのためのプレゼント、と箱を差し出された。
受けとると、開けてみてと言われたのでそのとおり、フタをはずす。

「わぁ…!」

箱に入っていたのは、きれいなピカピカの靴だった。先っぽがまるくて、うすいグリーン。かかとには、小さなリボンがついている。
こんなきれいでかわいい靴を見たことがなくて、わたしは本当にびっくりした。
靴を見つめていると、頭のうえから笑い声が聞こえた。あわてて見上げる。

「お兄ちゃん、これ」
「気に入ってくれたみたいだな」
「うん、とっても」
「それは良かった」
「ありがとう…」

靴とお兄ちゃんを交互に見る。

「ルシェと同じ目の色にしたんだよ。足も治ったし目も良くなったから、記念になるようなプレゼントを渡したかったんだ。ちょっと遅くなっちゃったけど」

わたしはもっともっと嬉しくなって、胸がぎゅっとした。自分のことをずっと気にかけてくれてたんだと、改めて思った。

「じゃあちょっと待って」

そう言って箱から靴を取り出すと、お兄ちゃんはわたしの前で膝をついた。
そして座っているわたしの足からいつもはいている靴を脱がせた。
一体なんだろうと、わたしがまた驚いているうちに、今度はプレゼントしてくれた靴をはかせてくれた。
なんだかそれがおとぎ話であるようなお姫さまと王子さまのやりとりのようで、少し恥ずかしい。
脱がせてくれたほうの靴を箱にしまいながら、歩いてみてと言われたのでベンチから立ち上がる。
地面に足をつけると、ちょうどいいサイズでよくなじんでくるのが分かった。
わたしはその場でくるりと一回転してみせた。

「ぴったりだな」

良かったと、お兄ちゃんが安心したように笑った。

「うん、お兄ちゃんほんとうにほんとにありがとう」

わたしも笑って、またお礼を言う。何度言ってもきっと足りない。

「よし!行こう」

差し出された左手を掴んだ。

歩きながらわたしは足下ばかりを見てしまう。
輝く靴を見つめながら、次はわたしがお兄ちゃんに何かプレゼントをしようとこっそり胸のなかで誓った。



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